サルサ★マン =悪夢のアダルトモテキ=

「サラリーマンNeo」+「モテキ」のような小説です。リーマン生活と結婚までの恋愛の理不尽さを徹底的に描いていきたいと思います!「モテキ」はちょっとアダルトな表現を含みます。大人の人向けです。

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第2章の28 キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン






へそを曲げた矢吹からは恵美子への連絡を一切しなかった。1ヶ月を過ぎた頃、恵美子のほうから電話があった。最初は5分10分。徐々に会話時間は延びて1時間くらいは無駄におしゃべりするようになった。極限の会社生活で家にいるときの矢吹は寝ているか音楽の編集作業をしているかどちらかであったが、電話の時間というのが新たに組み込まれた。NTTは残業代は支払わないくせに電話代だけは社員であろうと割引なしで容赦なく請求した。

「ねえ、そろそろ夏じゃない?今年新しい水着買っちゃったんだー」
「へえ」
「わー見てみたいーwとかいいなさいよねー」
「わー見てみたいー」
「でしょー?で・いつにする?海?」

7月の半ば、最初のデートから3ヶ月が過ぎようとしている頃、海デートに行くことになった。夏対策として矢吹は伸び放題だった髪の毛をばっさりとベリーショートに刈り込み、うっすらとひげを伸ばし、運転用にOAKLEYのイチローモデル(5万円)をかけて待ち合わせのパーキングに現れた。

「うわっやだーー全然わかんなかったーー超カッコいいじゃーん」

好感触。恵美子もサーファーぽくショーパンにTシャツにサングラスという出で立ちだ。ナチュラルにダメージジーンズになったものを膝丈で切ったショーパンに、Made in Spainの一点もののプリントTシャツの矢吹とファッション的に似ていてカップルに見えなくもなかった。

海に着くと持参のドームテントを張り日差しをブロックし、タータンチェックのシートを敷き、小型のipodスピーカーでJanet KayやAswad等のレゲエを流して気分を盛り上げた。矢吹はどんなときもシチュエーションにはとことん凝る。恵美子の水着はワンピだが、かなりアグレッシブでアスリート体型の彼女によく似合っていた。そのボディラインはフェラーリの官能的なフォルムに似ていた。特にお尻は背中についているのかと思うくらいヒップアップしており、その過半数は露出していた。サングラスをかけてきたのは正解であった。

「あーーやきそば落としちゃったーとって、とってー」

と恵美子はワンピの胸元をぐいっとひっぱり今度は形のいいお椀型の胸の谷間の過半数を見せ付けた。

(こいつ明らかに確信犯だ。)

まだ当時の矢吹は意外とシャイで真面目だったので、
「と・とれるわけねーだろ!」
と答え恵美子のドヤ顔を拝む羽目になった。

矢吹は女性からの押しには特に弱かった。

海デートのあと、葛西臨海公園、水元公園、TDLと立て続けにデートを続けた。

背後からお腹に手を回せば
「ねーねー腹筋すごいっしょー」
胸に手を回そうとすれば
「偽乳がばれちゃうでしょーw」
うなじに顔をうずめれば
「赤ちゃんの匂いするでしょー」
あきれてそっぽを向くと
「つーんだ。」

完全なボールではない、あれ?ストライク?というくさいボールを投げて打ち気をそらしてくる。バッターはフルスイングしたくてうずうずしているのに打てない。それなのに三振もできない。じりじりとなぶり殺しにされる。泣きの寸止めの典子とは一味も二味も違う。また、手口はビッチでもモラルを持ち合わせたビッチなので夏樹とも違う。誇り高いといえばそうなのだが、素子のように上からは来ない。むしろ下からうりうりしてくる。

「よ、ニュータイプ」(カイ・シデン)

気のあるそぶり、お色気攻撃、その気になるとヒラリとかわす。

「キャッチ・ミ~~♪?イフ・ユ~・キャ~~ン♪♪www」

クソ生意気そうな青い瞳のガキに翻弄されるかのように、子悪魔テクニックの基本中の基本の術中にまんまと引っかかり、いつしか矢吹の頭の中には恵美子の存在が大きく離れなくなっていった。妄想の中では何度もベッドインし様々な体位で弄った。しかし現実はデート4回終了してキスのひとつもできていない体たらくだ。

「ザクとは違うのだよ。ザクとは。」(ランバ・ラル)

5回目のデート。デートネタもつき六本木WAVEでいつものようにCDをまとめて買い、自宅で視聴会という普段着デートで部屋に呼ぶことに成功した矢吹は、頃合を見て唇をいただきに行動を起こした。恵美子はジタバタと抵抗し、

「お母さーん!剛君が変なことしてきまーす!」

と大きな声で告げ口しようとしたので、そのよくしゃべる唇を力ずくで唇で塞いだ。ジタバタしたまま。これが恵美子とのファーストキスである。思い返すとロマンチックなファーストキスって今まで一度もないんじゃないだろうか?インターフェアランスをとられないよう3秒間押さえた後にリリースしたら、

「ムリヤリだゾっ!!w」

…と今度は恵美子のほうからキスしてきた。今度は大人のキスだった。

「ほう、思いきりのいいパイロットだな、手ごわい。しかし。」(ランバ・ラル)

恵美子をそのままベッドに押し倒すと、焦るなー焦るなーと唱えながら胸のエアダクトから熱い空気をブシューーと吐き出した。じっくりと舌をからめながらTシャツをめくりあげ片手でブラのホックを秒殺すると過半数まで見たことのある胸の頂を確認。エンツォ・フェラーリに心より感謝。この世にこんな造形美があったなんて。この極上の小悪魔は間違いなく歴戦の女戦士だ。流れから行くと今日は最後まではない。ならば、乱暴なイメージを植えつけるのは得策でない。この先はどうなるんだろうという期待でつなげるようあくまでもベリーソフトな感じで…。矢吹のほうも考えて戦えるようになってきた。

「モビルスーツめ…やるようになった!」((シャア)

下着の上から軽く擦っているだけでも、未だかつて聴いたことがない程の極上の女の声で鳴きだした。まるで犬が甘えて鳴くような声だ。恵美子は、男を根本的に男を狂わしてしまう何かを持っている。ファースト・インプレッションで悪印象まで持っていたのに、いつの間にか追いかけているのは矢吹のほうになっている。あざやかなまでの逆転劇に舌を巻いた。

その日の夜彼女の家まで送っていったときに、きっちりと告白して、付き合うことになった。
もちろん矢吹のほうからだ。
選挙カー並みに「好きだ」を連呼して。。。

「悔しいけど・・・僕は男なんだな。」(アムロ・レイ)

♪「Love You Always @ Janet Kay」 IN ~
http://www.youtube.com/watch?v=Kc9sCxLEB_M


【続く】

  1. 2012/04/05(木) 12:39:40|
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第2章の27 ファースト・デート

東京支社も2年目に突入し、仕事はますます苛烈を極めた。ただどんなに疲れていてもアイスホッケーの練習とスキーだけはまだ続けていた。1年を通じて秋から春にかけての矢吹の生活は、ウィークデイは仕事でよくて終電。ほとんどは会社に宿泊。土日の昼間は出勤。深夜の2時からアイスホッケーの練習。家に帰り着いたらビールを大瓶で6本くらいあけてから眠りにつく。スキーシーズンともなればこれに不定期にスキーが組み込まれる。 身体を休める時間など皆無に近い。恐るべき気力と体力としかいいようがない。 蔵王へスキー旅行に行ったときも、荷物は先に旅館に送って、ギリギリまで品川のオフィスで仕事をして電車の時間が来ると仕事を切り上げた。寝台列車の中でスキー仲間とビールで乾杯し、3本4本あけたところで気を失ったように眠りこけた、 蔵王で矢吹が一番好きなのは黒姫スーパージャイアントである。滑走距離が1,720mと長い上に高速クワッドで効率良く頂まで輸送してくれる。最大斜度は26度と控えめではあるが、気持ちよくスピードが乗る中斜面が続き、少し緩斜面があった後にラストにすとんと急斜面があってフィニッシュする。ダウンヒルのタイムトライアルにも似たスリルをいつも味わっていた。スピードに飽きると横倉の壁(最大38度)で連続小回りで直線的に滑走することを目標にトライアルを重ねることが多かった。 帰りの電車は予算の関係上ただの普通電車だった。電車内はガラガラだったが、仲間とどこに座るか物色していたところ、10人いれば10人がこの娘超カワイイ!と拍手を打つであろう美少女が連れの女友達と二人で座っていた。矢吹にとって過去最高ランクの容姿だ。 チャーンス! このチャンスを見逃すわけがない。通路をはさんだ向かいのボックス席に陣取ると暇つぶしに「有名人古今東西」を始めた。 【SPEC】 NAME:恵美子(スキー帰りに電車で知り合った女性) FACE:卵型小顔の小悪魔キレカワ系、思わず触りたくなる見事な茶髪のロングストレート SIZE: T158.B85(C).W57.H83 BLOOD TYPE: A TYPE: 元女優志望。某有名映画の最終選考まで残ったことがある。下町っ子でチャキチャキしている。無駄肉が一切ないアスリートぽい体型、肌の手入れは完璧。 似ている芸能人: ルックスが武井咲で性格が吉高由里子 「ち?ち?ちまくら ちよこ?」 「それ 『し』だから!」 「ど?ドリフのカトちゃん?」 「反則してんのに負けになってるから!」 「ず?ずーー?ずなんてねえよ!あ!Zoo!」 「終わらす気かおめえはよ!」 細かいボケをコツコツと積み重ねていると、次第にクスクスと笑い出し、しまいには答えを積極的に投入してきた。 チャーーーンス! 東京に着くまでの間に仲良くなって、トランプなどしていたのだが、東京のアナウンスが聞こえてきた頃、矢吹はあわてて連れの女性の方にアドレスを聞いた。本人に聞けば良かった。 …というのも家に帰って2つのアドレスのうち、どっちがどっちなのか分からなかったからだ。容姿からいって恵美子の方だ!確率は1/2.根拠のない決めうちで電話して「あのさ、どっちの方かな?」と聞いてみると「カウチン!」と答えた。ビンゴ!彼女は暖かそうなカウチンのセーターを着込んでいた。彼女はスキーだけではなく、テニスもかなり本気に取り組み、バイクも乗りこなすスポーツウーマンだ。キレカワ系の外見とは裏腹にしゃべるとチャキチャキしていて「歩いてる」は「歩ってる」、になってしまい、本当によく笑う。そしてボケ・ツッコミの間合いが矢吹と絶妙に合っていた。 好感触を得た矢吹は早速恵美子を横浜ドライブに誘った。冬が明けGWも近づいた頃のことである。デートコースはデートマニアの友達とインスペクション済の超攻撃的勝負デートコースだ。「キィエーイ」と叫びながら一太刀で勝負を決する示現流的一撃必殺のコースだ。二太刀目は全く考えていない。 三溪園は生糸貿易により財を成した実業家 原 三溪によって、1906年(明治39)5月1日に公開された。175,000m2に及ぶ園内には京都や鎌倉などから移築された歴史的に価値の高い建造物が巧みに配置されている。(現在、重要文化財10棟・横浜市指定有形文化財3棟)横浜にいながらにして、ちょっとした京都感覚が楽しめるという按配だ。 風情のある竹林をぬけるとそこは展望台になっていて横浜港が一望にできる。洋と和の絶妙な意外なマッチングに恵美子は食いついてきた。 「わーなんだかドキドキするー。すごい意外な組み合わせー」 続けざまに本牧海釣り桟橋へ向かう。ここは文字通り釣り人のための施設なのだが、横浜で海のすぐ上を歩けるところは本牧の釣り桟橋か大黒の釣り桟橋のみである。埠頭から眺める海とはまったく趣が異なり新鮮である。 「わーこんなところ来たことなーい。足元が網になってて海がすぐ近くーすごーい」 完璧。仕上げはベイブリッジのたもとにあるボートハウス風の地中海料理屋だ。ここでも恵美子との会話の相性は抜群で終始笑顔で会食を終えた。会計を済まし、ベイブリッジを見ながら散歩する予定だったのだが、急に恵美子は今日は帰ると言い出した。何か不都合があっただろうか? さっきまで、あんなにはずんでいた会話もなくなり恵美子の家に送っていく途中にポツリとつぶやいた。 「あたしね、ケチな男って嫌い。」 「は。あ。そう。(もしや…さっき割り勘にしたことを怒っているのでは?)」 矢吹はデートコースは凝るほうだが、恋愛マニュアル本の類を一切読まない性質であったので、 「最初のデートのお会計を割り勘にするような男は、二度と会うのをやめましょう。これはお金の問題というより、そもそもあなたを喜ばせようという気持ちが欠けていることのあらわれです。」 と女性向けの恋愛指南書に明文化されている事実を知らなかった。 それ以上特にリアクションのない矢吹にさらにたたみかけるように 「あと、自信満々の男も大嫌い。」 (は?なんだそりゃ?今俺が仕事で、失われた自信をとりもどすために、どんだけ泥水をすすっているのかわかっているのか?それを目指している男そのものが大嫌いって全くもって意味がわからない!) 「ふーん。じゃ、彼氏にするなら金持ちの自信のない草食系とかぴったりじゃん?w」 どんな女性であろうと自分を軽く見られるくらいなら、付き合っていただかなくて結構。誇り高き獅子座のAB型の矢吹はこう言い放つと口を閉ざした。ちょっとカワイイからって男がみんなお前にチヤホヤすると思ったら大間違いだ!矢吹は対人スキルで限界値は高いが、ひょんなことでヘソを曲げると自分から折れることは絶対になかった。 ♪「プレイ・バック PartⅡ@山口 百恵」 IN~ http://www.youtube.com/watch?v=VUeBkl687lQ ♪馬鹿にしないでよ そっちのせいよ ちょっと待ってPlay back Play back 今の言葉 Play back Play back なー矢吹―?それくらいの金だったら出してやれば?9回まで無失点だったのに、最後の一球で痛恨の。。。勝てた試合だったと思うぞ? お前が六本木WAVEで一回で買うCD代の半額じゃん?お前絶対金の遣い所間違っているよ。(21世紀の矢吹) 【続く】
  1. 2012/04/03(火) 21:16:06|
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第2章の26 やわらかい手

尚子と出会ったのは、導入研修直後の5月に行われた葉山BBQ大会において、矢吹の独断で発表された「Lake Yamanaka October Tour」においてだった。当時プロの旅行営業ウーマン素子が味方についていたので怖いものは何もなかったし、彼女にとっても営業成績が上がるのでウェルカムな話だった。 尚子はそこに帰国子女の同期の幼馴染としてゲスト参加してきた。

【SPEC】
NAME:尚子(矢吹の同期の同級生)
FACE:卵型のあっさり顔、栗色のロング、ゆるいソバージュ
SIZE: T160.B85(C).W57.H84
BLOOD TYPE: B
TYPE: 開放的で奔放。しゃべらなければいい女の部類
似ている芸能人:まとっているオーラが長谷川潤

尚子は社内にはいない奔放なタイプで高速道路で走っている車のサンルーフから上半身を乗り出したり、全員初対面の男子の中において常に会話の中心にいたり、夜中の男性用露天風呂にバスタオルひとつで乱入したりもした。会話のほうもかなりの下ネタトークもOKで、
「女に生まれたからにはマグロ男を気持ちよくするスキルくらいないとね。口で逝ったことないとかありえないから。そいつの女へたくそだから!」
と豪語していた。

そんな彼女と2-2で山中湖に行くことになったのは、素子と別れてしばらくあとのことだった。集合時間10時のはずが結局全員集まって用賀を出発したのが12時。車で行った山中湖はあいにくの雨で、思いついたレジャーがボウリング…と都内で遊んだほうが良かったのではないかという内容だった。遊んでいる間中尚子は矢吹の横のポジションから離れることなく何かというとボディ・タッチを繰り返していた。

深夜富士山に登ろう!と車を出し、街灯ひとつない道路でヘッドライトを消して真の暗闇にしてキャーキャー言って楽しんでいた。デロデロに酔っていた矢吹は尚子の膝枕で高いびきをかいていたが、目が覚めるとなんとなく目が合いなんとなくキスした。酸っぱいような酸味のあるようなキスだった。この味…なんとなく夏樹を思い出した。前には運転者と助手席に2人乗っているが暗闇で後ろは見えない。(はずだ。)シチュエーションまで似てる…。矢吹の手があちこち活動を開始した。背徳的な場所だと余計攻めてみたくなる。尚子は声ひとつあげず首から上は他の2人と普通に会話していた。矢吹はこの妙な状況下で萌えた。

帰り道、尚子は
「自分は最後でいいから、皆を先に送ってあげて。」
と殊勝なことを言い出した。なんとなく考えていることは分かったが、逆らわず皆を送り届け、最後に尚子の家に送り届けた。時刻は0:00近かった。
「運転で疲れただろ。お茶でもいれるからあがっていきなよ。」
「いや。いいよ。ここで休むと帰れなくなりそうだから。」
「いいよ。帰らなくても。泊まっていけよ。」
「え?いいよ。帰るから。」
しばらく押し問答が続いたが、急に尚子が
「一緒にいてえんだよ!一緒にいてくれよ!」
…といきなり泣き出した。さっきまでの尚子とは別人だった。ほんの戯れじゃなかったのか?。
「お前昨日キスとか色々したじゃねえか!ちゃんと責任とれよ!」
一口食べたケーキは最後まで食えということか?

矢吹は極端に押しに弱かった。

でも今回ばかりはセックス抜きで!と固く決意して部屋にあがった。

手際よく敷かれた布団で、どうしようか思案しているところに矢吹の身体に異変が起こった。不夜城でのウルトラハードな仕事で患った十二指腸潰瘍が猛烈な勢いで痛み出したのである。仰向けになれないほどの痛みで横向きにくの字に背中を折って七転八倒した。尚子はおろおろしながら「大丈夫か?医者とか行くか?」とずっと背中をさすり続けてくれた。つきあったら意外といい奴なのかもしれない。

まんじりともできずに朝を迎え、矢吹の身体に再び異変が起こった。思春期以降の男子なら当然起こる朝立ちである。お腹をさすっている尚子に、悟られないようクールな顔を装っていたが、ふとした拍子に彼女の指がそこに当たり発覚してしまった。

「あれーーここがこんなんなってるぞー?」
「年頃だからな。仕方ないの。」

尚子はやわらかでしなやかな指で、お腹のかわりにそこをさすりだした。テクニシャンを豪語するだけあって、繊細で完璧な指使いだった。今度は矢吹の方が声を出さないようにするのに必死だった。ここで抵抗できる奴は100%ゲイだ。長い時間をかけて、もうギリギリまで我慢させた後に、尚子は引き出しからゴムを出してきて

「するならつけてくれよな」

と矢吹に渡した。もう少しかわいい言葉遣いだったら、だいぶその後の展開も少しは違っていたのかもしれないのだが、さっきのキスの味といい、したきゃすれば的な態度といい、終始一貫した男言葉といい、矢吹はする前から半分萎えかけていた。

案の定、挿入後3分もたたずに萎んで出てきてしまった。素子&夏樹後の矢吹は極めてデリケートだった。

その後、再び十二指腸潰瘍が痛み出した矢吹は、

「朝食ができたから食べていけよ」

という尚子を振り切りそそくさと退散した。
このまま彼女っぽいポジションをとられるのは嫌だった。
この場の空気に耐えられなかった。

人を好きになるってこんなに難しいことだっけ?
どうやったら人を好きになれるんだっけ?

女性と縁がないわけじゃないのに、どうしてここまで連続して、うまくいかないんだろう?
どうやったら好きな人とめぐり合うことができるんだろう?
そもそも人を好きになるって何?

古今東西どんな哲学者でも解くことができない迷宮に矢吹は迷い込んだ。


♪「BOY MEETS GIRL@TRF」 IN~
http://www.youtube.com/watch?v=ZVG9bsuTPVo

♪Boys Meets Girl それぞれの あふれる想いにきらめきと
瞬間を見つけてる 星降る夜の出会いがあるように…
Boys Meets Girl あの頃は いくつものドアをノックした
あざやかに描かれた 虹のドアをきっと見つけ出したくて…

Boys Meets Girl 出会いこそ 人生の宝探しだね
少年はいつの日か 少女の夢必ず見つめる
Boys Meets Girl 輝いたリズム達ガ踊りだしている
朝も昼も夜も風が南へと 心をときめかせている

安らぎが欲しかった 誇れる場所が欲しかった
だけど大切なのは あなたとあの日 出会えたことね



【続く】




  1. 2012/04/03(火) 00:02:00|
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第2章の25 理想の恋人.com

「恋愛で開いた穴は恋愛でしかふさげない。」あくまでも一般論だが、正解である。実際にその後、矢吹は死ぬほど仕事に打ち込んだが、素子の穴も、夏樹の穴もふさぐことはできなかった。彼女ができるチャンスがなかったわけではない。単純に恋愛に消極的になっていただけだ。完全に仕事中心の生活で女性に対する興味もなく、着るものに対しても無頓着であった。

里依紗は痛恨の判断ミスで彼女にする機会を逸し、留美は素子と似て非なるもので完全な人違いだったし、典子は寸止めで泣きまくるだけで話にならないし、いつかは処女で恋愛ごっこで終わった。

唯一まともに付き合う可能性があったのは友子である。

【SPEC】
NAME:友子(矢吹の大学の同級生)
FACE:卵型の美人顔、黒髪のショート
SIZE: T155.B80(B).W57.H80
BLOOD TYPE: A
TYPE: 元気溌剌娘。全生徒人気投票№2。頭の回転早い。
似ている芸能人: 上戸彩



彼女もスケートの授業で知り合った女性でチャーリーズ・エンジェルの最後の一人である。彼女とは素子と付き合っているときから、ことあるごとに2人で呑みに行っては色々なことを語り合った仲である。 彼女は趣味の幅が広く、矢吹のむやみやたらに守備範囲の広い映画・音楽・本を始めとする話題のほぼすべてを打ち返すことができた。矢吹の知っている女性でこれをなしえたのは今のところ友子が最初で最後である。


彼女は最も仲の良い女友達で、そこに友情があることは間違いない。素子と別れた今となっては誰に遠慮することなく会う事もできるし、付き合うことだってできる。行きつけのカントリー風のバーでは、すでに「彼女さん」と呼ばれ2ショット写真が入り口に貼り付けられている。交際範囲も2人だけから薩摩など矢吹の友人を交えたものに広がり、なんとなく空気は「友子は矢吹の彼女」ぽい空気が漂い始めていた。

だが、友達期間が長かったため、手を握ったことさえなかった。一度TDLの帰りに矢吹の家から遠く離れた場所でさんざん呑んだ後に

「あーーもう帰るのめんどくせーー!ねえ、泊めてくれない?」

と振ってみたことがある。リトマス試験紙のようなものだ。矢吹はその瞬間に、友子の瞳に喜びが浮かんだのを見逃さなかった。脈アリ!

「ダメだよーだ。そーゆーのはねぇ ちゃんと手順をふまないと。」

手順を踏みさえすればOKなんだな。そこはガッテンした。


それから少ししてから、今度は友子のほうから驚愕のオファーがあった。

「今度佐野の実家に一緒に遊びに行かない?すごいいいところなんだよ?」

いなかに実家がある人達の風習はよくわからないのだが、矢吹にとって実家に一緒に遊びに行き両親に会うということは

「結婚を前提にお付き合いさせていただいております!よろしくお願いします!」

という意味だ。手もつないでないのに?チューもしてないのに?手順を踏めってこの前自分が言ったばかりじゃん!部屋に泊まるより話が飛躍してるじゃん!

「ああ。今度ね」

お茶を濁した。

そろそろ、この2人の展開はラブコメ漫画のように周囲をやきもきさせた。薩摩は

「友子ちゃんほどの子はそうそういるもんじゃないよ?お前がいかんのやったら俺がいくけん。いってもいいのん?どうなん?ん?」

と明からさまに挑発された。

クリスマスを迎え、なんとなく夕食を一緒にすることになった。このラブコメ漫画に終止符を打つべく、銀座のティファニーで矢吹はオープンハートのネックレスを買い込んだ。肩肘の張らないカジュアルフレンチでワインを呑みながら、プレゼント交換した。オープンハートのプレゼントに友子は目を丸くして驚いた。

「すごーーーーい!まさか!こんなすごいプレゼントもらえるなんてーー!」
矢吹はその驚きの表情の中に困惑が同居しているのを見て取った。ん?なんだ?プレゼントが重すぎたのか?

「私もプレゼント買ったんだけどーー。んーーーー。ゴメン!」

出てきたのは「でんでん太鼓」だった。。。

なぜこのタイミングで「でんでん太鼓」??何かにかかっているのか?一緒に子供が作りたいとか??ぽこぽことマヌケな音を立てるそのオモチャはこの滑稽な空気感にぴったりであった。完全に「Wでやっちまった」状態だ。ここ一番の大勝負でぶちかましに出たら、相手力士がけつまづいた拍子に手をついて勝負あった。そんな一番である。勝者不在。観客呆然。今の一番って何?

年が明けて成人の日をからめた3連休。たたみかけることにした。こちらの気持ちは伝わっているはずだ。

「今度の3連休一緒に伊豆に旅行に行こう。」

ド真ん中のストレート。かわせるものならかわしてみろ!

「う・うん。ちょっと考える時間もらってもいいかな?」

もう即答でいいじゃん!と思ったがご要望どおり時間を差し上げた。。。裏目に出た。さんざん待たされた挙げ句返事は

「やっぱり~嫁入り前の身なので~友達誘って2-2で行くってことでどうかな?」

彼女から電話がかかってきたのは出発直前のことである。ここまできてビビったのかぁーー!!矢吹は天を見上げ大きなため息をついた。やっぱどこかのタイミングでキスでもしてないと無理かもなあ。大学時代夏樹を巡る恋敵で穴兄弟の桜庭を旅行に誘い、金曜日の夜に新宿西口のロータリーに集合して4人で伊豆に向かった。

旅行は男2人の体育会系力技で鬼のように笑わせ、すごく盛り上がった。旅行中の大きな収穫は友子がかなりの料理上手であることが判明したことである。スーパーで買える普通の食材で鶏肉のオレンジソース煮のような凝った料理を何も見ないで作ることができる。人一倍食い意地の張った矢吹にとっては、この女子力はかなりの高ポイントだ。矢吹にとっては友子のスペックは彼女にしたいと思うスペックのほぼすべてを兼ね備え「理想の恋人」と言って良かった。

旅行中の最も残念だったことは、友子が桜庭のことを気に入ってしまい、後に電話でアプローチした事実を桜庭から聞いたことである。桜庭が「忙しいから」と断って終わった話ではあるが、友子の矢吹に対する思いは恋人候補の一人にカウントされていないようだった。それ以前に相手の気持ちを最大限尊重した結果がこれか!冗談じゃない!人一倍プライドの高い矢吹の気持ちはもう取り返しがつかなかった。

「いったい何やってるんだろう。。。あたし。。。」

ふとした拍子に彼女がつぶやいた台詞だが、こっちが聞きたい。夏樹のコンビニ並にお手軽なご近所つながりの恋愛を彷彿させて生理的にムリだった。今回は何もなかったけど、こいつにもその才能はある。

あまりにも陳腐な表現だがお互い

「友達以上恋人未満」

のところでの付き合いで、結局そのグレーゾーンから一歩も出ることができなかった。頭が良くて気立てが良くて料理上手な子=恋人にできたら最高!という頭の中では「理想の恋人」でも、目の前にいたら抱きしめずにはいられない。。。といった本能的な恋愛とはだいぶ異なっていた。

彼女が他の男と結婚するとき電話で

「長い付き合いだったけど、ずっと(頭の中では)好きだったよ」

と初めて気持ちを正直に伝えた。

「そんなことないよ。」

特に説明はなかったが、その口調には自分に対する自信のなさと後悔の念がにじんでいた。彼女なりに感じていたことはたくさんあったと思う。

♪「友達の唄@BUMP OF CHICKEN」 IN~
http://www.youtube.com/watch?v=WfB79A7EKxo

♪あなたが大きくなるまでに 雨の日なんて何度もある
その中の一度は一緒に濡れた事 忘れちゃうかな

遠回りしちゃったけど 友達になれたのかな
お別れしたって覚えていられれば 大丈夫なのかな

空の冷たかった手が 初めて掴んだ手に
消えていく時間の中 引っ張られて走った 帰り道を探して

今 私が泣いていても あなたの記憶の中では
どうかあなたと 同じ笑顔で 時々でいいから 思い出してね




【続く】





  1. 2012/03/31(土) 13:26:23|
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第2章の24 別れの曲

8月の矢吹の誕生日の1週間前のデートの帰りのことである。矢吹はいつつもの通り素子の家まで愛車スカイラインで送り届けた。

「じゃあね。またね。」

おやすみのキスのタイミングなのだが、何を思ったのか、おもむろに素子はカーステレオの主電源を切った。

「何やってんだよ。」

電源を入れ直す矢吹。再び主電源を切る素子。

「もーなんなん…」
「矢吹君!あたし!!」
「ん?」
「 好きな人できちゃったの!」
「はい?」

あまりに唐突で脈絡のない衝撃的な告白に矢吹は言葉を失った。完全なる不意打ちだった。

「本当にごめんなさい!」

頭を下げたとたんに素子は堰を切ったように、とめどなく泣きだした。 初めて見る号泣だった。今まで涙が出そうなときは矢吹をにらみつけて涙が出ないようにする彼女が、今日は矢吹の腕にすがるようにして涙を隠そうともしない。

ちょっと待ってくれ。なんでお前が泣いてるんだ?本気なのか?泣くのはこっちの方じゃないのか?とにかく冗談とかではないらしい。

「相手は誰なんだ?」
「会社の上司。結婚してる人。」

しかも不倫かよーーーーーー!!?????矢吹は眩暈がした。つい3ヶ月前、夏樹の5股発覚で、今度は本命の不倫発覚か?俺の身の回りはワイドショーネタだらけなのか??悪い夢ならいますぐ覚めて欲しい。

「いつから?」は怖くて聞けなかった。そういう妄想のネタになるようなことは、聞かないほうが自分の身のためだ。自分と時期がまったくかぶっていないなんて考える方がどうかしている。ましてや不倫だ。いくらスゴ腕の営業ウーマンでも全くクリーンな身体で相手の言質がとれるわけがない。

「もう、決めてるんだな?」
「ごめんなさい。」

矢吹はしばらく考えを巡らせていたが、やがて意を決したように言った。

「わかった。元気で。」


3年半に渡る交際は、3分半の別れ話で決着がついた。
素子のほうも一切の未練を見せずに、後ろを振り返ることなく家の中に駆け込んで行った。

自分の家の前という絶対的安全圏で、先に泣いてバリヤを張るなんてウルトラCを使われたら、それ以上何を言えば良いのか?他でもない素子の話である。妻子持ちのただの火遊びに付き合うほど間抜けではないはずだ。それなりに勝算があるからこそ切り出した別れ話のはずだ。泣いてこそいるものの、これは相談事項ではなく決定事項だ。矢吹が「了解」するまで、ただただ謝り泣き続けるだけだろう。苦痛以外の何者でもない時間だ。

仮に矢吹が思い余って非常手段に訴えた場合は、歩いても30秒かからない家の玄関まで走りこむだけだ。もう車を止めたところで勝負はついているのだ。せめて別れ際ぐらいは綺麗に、幸せを願うのが男ってもんだ。

もう二度と訪れないであろう彼女の家の前で、誰も見送っていない路地に向かっていつものようにハザードを3回点滅させると、そのまま車を走らせた。運転しながらの帰り道、自分の部屋で初めてキスをしたこと、満開の桜の下で告白をしたこと、尾瀬で初めて結ばれて涙したこと、2人で毎週のようにデートしたこと。サイパンの海を見ながら一緒にくつろいだこと。。。ついさっきまで、時に疎ましいとさえ思う相手と別れたというのに、こういうときだけは良い思い出ばかりがプレイバックされる。男というものは、なんて不自由な作りをしているんだろうか?

気を紛らわせるためいつもの倍以上の煙草を吸った。そうでもしないと事故を起こしそうだった。


♪「勝手にしやがれ@沢田研二」 IN~??

♪壁際に寝返りうって 背中で聞いている
やっぱりお前は 出て行くんだな

悪いことばかりじゃないと 思い出かき集め
鞄につめこむ気配がしてる

行ったきりならしあわせになるがいい
戻る気になりゃいつでもおいでよ

せめて少しはカッコつけさせてくれ
寝たふりしてる間に出て行ってくれ

アア アアア アアア アア
アア アアア アアア アア

夏樹の5股事件発覚から3ヶ月もしないうちに起きた重大な不倫事件に、矢吹の心はささくれ、恋愛をするために重要な大事な芯棒の部分が完全に抜け落ちた。恋愛に深入りすると事故が起こったときに自分自身に深刻な傷を負う。そもそも女なんて理屈とは別の世界で生きているのだから、日頃の言動を鵜呑みにしてはいけない。今日の「愛している」は明日の「別れましょう」だ。

2度とのめりこむような恋愛はしない。

初めての彼女との恋の結末はほろ苦いものに終わった。

♪「別れの曲@ショパン」 IN~
http://www.youtube.com/watch?v=0gM4dWVc0fM


【続く】





  1. 2012/03/31(土) 00:35:20|
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サルサ★マン

Author:サルサ★マン


小説「サルサ★マン」はストレスフルな会社生活を送りながら、普通以上に理不尽な仕打ちをされ、反動で普通以上に恋愛しまくって徹底的に理不尽な仕打ちをされます。一言で言えば「恋愛体質のリーマン」です。どうぞお楽しみ下さい。

第1章は「リーマン生活」
大手通信会社の内部事情をかなり赤裸々に描いておりますので、企業エンターテーメント小説としてお楽しみいただけます。就職活動中の夢見る学生諸君も現実は早めに知っておこう!

第2章は「モテキ」
主人公矢吹が結婚に至るまでの喜怒哀楽に満ちた恋愛エンターテイメント小説です。モテキの登場人物になぞらえて書いていたら人数オーバーになってしまいました。(ドラマ4名+映画4名=8名)


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